I&Lソフトウェアの
「これから」について、語っておきたい

 I&Lソフトウェアという会社の「これから」について語りたいと思います。代表者の発言には、もとより責任が伴います。公開の場で会社の未来を語る際には、組織としてのプランにまで落とし込まれたものであるべきです。

 その意味から言えば、今からお話することは、私の個人的な思いがベースになっていますが、全社的にも具体的な中長期計画として文書で発表し、説明している内容です。

 つまり「経営陣の世代交代」と「株式上場」について――。

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ワンオーナーだが、“個人商店”ではない
多士済々とお客様に恵まれて

 I&Lソフトウェアは、私が設立した会社です。創業したとき、まだ20代でした。以来、今も私が代表を務めています。私は100%オーナーでもあります。

 幸いにして、I&Lソフトウェアは、多士済々とお客様に恵まれ、創業から約30年を経ることができました。また、“吉岡個人商店”の域を脱してからも、すでに充分な歳月を経たものと思っています。ずいぶん前から、私が前面に立ってあれこれ対応することはほとんどなくなっていますから。

 とはいうものの、今に至るもワンオーナーのプライベートカンパニーであることに違いありません。

当社の「次の30年」のために――
どこに向かっていくことが最良の選択なのか

 創業から今日まで一心不乱に走り続けてきたという自負は、私にもあります。まだ走れると思っていますし、実際そうしています。しかし、人間の命には限りがあります。

 また、私には子どもがいますが、私は以前から「自分の子どもには会社を継がせない」と公言してきました。これは、私自身に「人生は、職業選択にせよ、生き方にせよ、最後は、すべて、自分自身で考え、判断し、行動するべきだ」という思いがあり、彼にもそのような人生を歩んでもらいたいと思っているからです。親の会社を継いだのではそうはなりませんから。

 では、当社の「次の30年」のためには、どこに向かっていくことが最良の選択なのか?

 M&Aで会社を売却し、自分だけが株式の売却益を得るのか。株式の持ち分比率はさておき、プライベートカンパニーのまま、会社の所有と経営とを分離した会社にするのか。

 ……それらの選択には違和感がありますね。

 当社の今は、私だけの力で成り立っているのではありません。当社社員ひとりひとりの力、そして、それらの上に成り立っている組織の総合力があるからこそ、当社の今があるんです。そうであるならば、当社の企業理念の維持に全力を尽くせる、その意思と能力のある当社の社員に、私のあとを託す。つまりは、生え抜きの人材に次代の経営を託す。そして、当社を真のパブリックカンパニーにするために株式上場する。

 当社の「次の30年」のためには、そこに向かっていくことが最良の選択ではないかと思っています。

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65歳で社長を引退する
それまでに、上場企業と同等レベルの経営管理体制を整備する

 そのためには、私自身が走り続けながらも、当社を次代にバトンを渡せる会社にしなければと、その準備に着手しました。2015年10月に、「経営企画部」を設置して、社員1名を専任として配属しました。上場企業と同等レベルの経営管理体制を整備するためです。

 株式上場するためには、コーポレートガバナンスが確立されていることが必要ですが、それと同時に、上場条件を満たす利益を継続的に出せる必要があります。当社が身の丈にあった成長をめざしている以上、この数字をクリアできるまでにはある程度の年数が必要です。ならば、それまでの間に、先に、上場企業と同等レベルの経営管理体制を整備してしまおうということです。

 必要な規程類の整備と運用。次世代経営陣の育成。上場会社に必要な社内体制の整備等々。毎年、優先順位を考慮しながら順次取り組んでいます。私が社長を引退すると公言している65歳までには、ほぼ整備できている状態に持っていけると思っています。

 また、余談ですが、金融機関から融資を受けるためには、原則、代表取締役の個人保証が必要です。これについても、その頃には、個人保証を必要としないだけの内部留保も積み上がっていると思います。

生え抜きの経営陣で、株式上場する

 私が社長を引退するタイミングで、取締役である私の親族や友人は全員退任です。

 次代の経営陣は、当社の企業理念の維持に全力を尽くせる、その意思と能力のある当社社員、つまりは、生え抜きの人材に担ってもらいます。その人たちに当社の次の時代を託します。

 次代の経営陣の人たちの手で、当社を、ワンオーナーのプライベートカンパニーから真のパブリックカンパニーにしてもらいます。株式上場です。

 私が社長を退任した3年後までには。

 またまだ遠い道程ですが、当社のそこまでを見届けることが、I&Lソフトウェアの創業者兼オーナー社長の最後のミッションだと思っています。

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吉岡 朗

1960年生まれ。法政大学法学部法律学科卒。
シナリオライターをめざし、大学卒業後はシナリオの専門学校に通う。
24歳のときに、コンピュータ未経験でソフトハウスに入社。3年間、SEを経験する。
その後、1年間の準備期間を経て、1989年10月、当社を設立。現在に至る。