研修はキツい、仕事も大変……それはそうなんですけど。

 ゲームの「シムシティ」にハマったことから大学では都市計画を専攻したのですが、授業でCADを使うようになって、ソフトウェアというものの面白さに取り憑かれるようになりました。
 狙ったところに思ったように線が引ける。ボタンひとつで3Dにも変換できる。こんなすごいことができるソフトウェアの中身というのは、一体どうなっているのか? 完全なる独学ですがプログラミングも少し勉強。雑誌やネット動画を参考にJavaでコードを書いて、「あっ、動いた動いた!!」などと楽しんでいるうちに、これを仕事にしたいと思うになっていったのです。
 就活も、建築系や土木系ではなく、IT一本槍。ネットワークの会社も少し受けましたが、ソフトウェア開発会社を中心に情報を集めて、I&Lソフトウェアに出会いました。
「プログラミングをやりたい」と強く思っていましたが、その時点でのスキルは、しょせん独学レベル。まるで自信はありませんでした。基礎から体系的に技術を教えてくれるという点に惹かれました。
 それと、会社説明会でも面接でも、正直な会社だなという印象を受けたのもポイント。
「研修はめちゃくちゃ大変だよ」「仕事もけっこうしんどいよ」「待遇はほどほどだよ」
 そこまで不利なことばかり言わなくてもいいのに……でも、おかげで入社後にギャップを感じることは、ほとんどありませんでした。むしろ「そこまでじゃないですよ。自信持ってください」と、社長にも人事にも言ってあげたいくらいです。

自分がピンチに陥るまでただのお題目と思っていた

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「お客様にとっての最上級」と言われて、最初のうちは「なんじゃそりゃ!?」と思っていました。妙に哲学っぽいし、お題目のようなものじゃないか、と。
 でも、新入社員技術研修の中盤ごろに「これかぁ〜」と痛感する出来事がありました。
 それは、以前の課題で書いたコードに手を加えて、別のプログラムに作り直す課題を与えられたときのこと。元のデータも自分で書いたものなのに、いざ改修を命じられて、「どこから手を付ければいいのか、さっぱりわからない」という事態に陥ってしまったのでした。
 I&L QUALITYの基本は、“保守性の高さ”にあると教わってきました。万一トラブルが起きたとき、あるいは、機能拡張のための改修を施すとき、修正点をたやすく見つけられるよう「無駄を排して整理されたコードを書け」と繰り返し言われていたのに、研修スタートのころに書いたコードは徹底できていなかった。
 仕方がないので、課題の提出時間が迫る中、コードを頭から読み返して修正点を探したのですが、もう焦りまくりでした。
 今にして思えば、丁寧なコーディングの重要性を思い知らせるために、トレーナーは、元データの粗い出来栄えに、わざと目をつぶっていたのかもしれませんね。

リモートワークの現場でも飛び交うコミュニケーション

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 プログラミングという作業は、パソコンに向かって黙々とキーを叩き続けることと思っていました。研修中は、おおむね、そのイメージどおり。
 でも、実際の仕事では、周囲とのコミュニケーションが不可欠で、チームの先輩上司もフランクに話しかけてくれる人たちです。今の配属先はリモートワーク中心の現場なのですが、画面越しに言葉が飛び交うし、チャットでのやりとりも頻繁です。
 私自身は、もともと口下手という自覚がありました。先輩から絶妙なタイミングで送られてくるチャットのメッセージのおかげで、コミュニケーションへの苦手意識を克服できたような気がしています。

悩みから救ってくれた先輩の一言「研修がいちばんキツいのだ」

 新入社員技術研修はかなりキツくて、すべてのカリキュラムをクリアしたのは、研修期間ギリギリでした。同時期入社の中には、やたらと進みの早い人もいましたから、そういう仲間と自分を比較して、焦ったり落ち込んだりの3ヶ月。
「自分で考える」研修なので、お互いに答え合わせをしたり、相談したりはできないのですが、席を並べているのだから、休憩時間にグチを言い合ったりはするわけです。
 ある日も、すこぶる出来のいい同僚相手に「俺はどうも向いてないみたいだ」とボヤいていたら、たまたま通りがかった1年上の先輩が「うちの仕事でいちばんキツいのは新入社員技術研修だ。ここさえ乗り越えれば、なんとかなる」と声をかけてくれました。
 現場配属されてみたら、先輩の言葉どおり、確かになんとかなっています。
 後輩ができたら、同じ言葉を贈りたいです。

必死に覚えたコーディングが通用しない現場に配属されて……

 研修はキツかったとは言っても、課題をクリアできれば快感で、キツさなど忘れてしまいます。それは現場に配属されてからも同じ。仕事でものをつくれているのが嬉しいし、成果を出せて面白さは増しています。他人様のお役に立てた実感もあります。
 今の現場はローコード開発のプロジェクトなので、研修で悩みながら覚えたコーディングのスキルが、そのままでは通用しません。手書きのコードならたやすく処理できることでも、先々の保守で専門知識のない方がコードを書かずに扱えるようにつくり込むには、われわれが先々を見越した処理を施しておく必要があるからです。トラブルが起きれば、制約のあるローコードのほうが、かえって原因究明も難しい。
 そういう業務に向き合って、なんとかなっているのも、あのキツかった研修で基礎をしっかり押さえたから。日々悩みながら……ではありますが。