「ふつうのOLさん」をめざして全敗。大逆転のIT就活

 高校時代は演劇部。裏方の仕事に夢中になって、その延長で芸術系の大学に進みました。といって、プロをめざしたわけではなかったし、大学で勉強したのも演劇の実技ではありません。卒業後は「ふつうの会社の、いわゆるOLさんになれればいい」と思ってました。
 ところがいざ就活を始めてみると……自力で探したエントリー先は6月までに全滅。今にして振り返れば、仕事に対する意識の希薄さを見抜かれていたのだと思います。
 ここでようやく就活エージェントに相談。WEB面談で希望を尋ねられて、「やりたいことは特にないんですけど……」と正直に答えました。ただ「長く働きたいから、AIに取って代わられない仕事がいいとは思ってます」とも。
 するとエージェントさん曰く「AIに職を奪われる未来が心配なら、この際、AIの側に回ってみるのはどうですか? 未経験者を採用するIT企業は意外と多いんですよ」。
 プログラミングなんて習ったこともなかったし、エージェントに案内された「未経験者可」のIT企業も自力で調べて見つけた会社も、聞いたことのない社名ばかり。
 でも、もう後がない……。
 腹をくくって駆け込み的に訪問した会社のひとつがI&Lソフトウェアでした。
 どんな会社かも調べないまま説明会に行ってみたら、頑固そうな社長が出てきて、「この業界は問題だらけだ」「うちの会社も安泰じゃない」「研修もキツいぞ」……率直すぎるほどの物言いに驚きながらも、気がつけば、社長のぶっちゃけ話に引き込まれていました。
 IT開発は、どこか芝居づくりと通じるものがある。そう感じたのも事実です。

顧客にとっての最上級とは、
エンジニアにとっても最上級。

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 開発現場に配属されてから日々チェックされるのは、「今レビューしたコードは、誰が見てもわかりやすいように書けているか?」ということ。たとえば、後に改修を施す必要が生じたとき、どこに手を入れればよいかひと目でわかるほどに整理されていないと、上司はOKを出してくれません。「顧客にとっての最上級」と言ってはいますが、実は「次に携わるエンジニアにとっても最上級」なのがI&L QUALITY。
 要するに、他の人への思いやりと気遣い。“もうひと手間”を絶対に惜しまないこと。
“未経験者”を脱したばかりの私は、こういうふうにわかりやすく捉えています。

職場では沈着冷静に議論し、
酒場では大いに盛り上がる“生真面目な人々”

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 仕事に関しては一切手を抜かず、愚直なまでにI&L QUALITYを貫徹しようとしているほどだから、間違いなく生真面目な人々の集団なんだろうと思います。仕事柄ロジカルシンキングが身についているせいか、議論の応酬はしても、声を荒らげる人はいません。
 面接の際、大真面目な顔で社長にこう確認されました。
「歓迎会やら忘年会やら打ち上げやらで、うちは社内の飲み会が多い。そういうの大丈夫?」
 最近の若者はオンとオフをきっちり分けて職場の飲み会などは敬遠しがち……世間のそういう風潮を私も知らないわけではありません。こういうことにまで気を回すのは、この社長らしさでもあると思うのですが、私は宴会好きの社風が嫌じゃない。むしろ大好き。
 オフィスでは沈着冷静な顔つきを崩さない先輩・上司のみなさんが、実に嬉しそうに盛り上がっている姿こそ、まさにオンオフの切り分けだと思うから。
 次の宴会でも楽しく酌み交わすために、今日も仕事を頑張ります!

ある日、突然わかるようになった。
プレッシャーと戦って開いた“悟り”

 メチャクチャつらかったです!!
「未経験者でも懇切丁寧にイチから教える」その言葉にうそ偽りは一切なかったのですが、一緒に技術研修を受けた6人のうち4人はバリバリのIT専攻。「タグとは何か?」というレベルから教わらなきゃならなかったのは私ひとり。カリキュラムの進み具合は日を追うごとに開いていきました。「ゼロスタートなのだから、それでいいのだ」と言われてはいても、勝手にどんどん追い詰められてメンタル的にキツかった。
 ところが研修期間を半分くらい消化したある日……突如、「ああ、そういうことか」と悟りを開いたような感覚を得たのです。つまりプログラミングの基本が腑に落ちた瞬間があったということ。そこからスラスラと課題が解けるようになりました。
 辛抱強くご指導くださった研修担当にも、陰で答え合わせに付き合ってくれた同期たちにも感謝しかありません。

ちらっと見れば、ぴたりと当たる。
そんな先輩がたに憧れて。

 研修明けが迫るころに「配属先に希望はあるか?」と問われたのですが、プログラミングが少しわかるようになって「動いたっ!! 大感動っ!!」というレベルですから、どこに行って何をしたいと考えるゆとりなどなかった。とにかく覚えたばかりの技術を使って仕事ができるなら、開発分野なんて何でもいいんです。
 1年前は自分がエンジニアになっていることなど想像もしていなかったのです。人生何が起こるかわからない。「5年後の目標は?」などと問われても具体的に答えられません。
 ただ、机を並べている先輩がたが、ちらっと見ただけでコードのズレを言い当てたりする姿に心底憧れを感じています。1日も早くそうなりたい。
 そんな実力が身についたら、自分で希望を口にしなくても、あちらこちらのプロジェクトからお呼びがかかるようになるはずですから。