3年間、同じ場所、同じ顔ぶれ。
息の長いプロジェクトに配属されて

 T.Y.は、新入社員研修明けからの3年間、ずっと同じチームでやってきた。
 直属上長にあたるサブリーダも同じ人。総責任者のプロジェクトリーダは一度プロジェクト異動で変わったが、最近、前のリーダが戻ってきた。同じお客様の別部門の案件を担当しているチームには後輩が配属されているが、T.Y.のチームには今年も新人は来なかった。

 お客様は、日本を代表する総合商社。担当しているのは保守開発。表計算やデータベースといった汎用アプリケーションで扱われるデータを自動仕訳したり、世界各地の営業拠点から送られてくる帳票データを勤務時間外にバッジ処理したり……つまり業務支援系のシステムだ。
 この種のシステムは、一通りの開発が終わっても、それで完了というわけにはいかない。広く普及している汎用アプリ製品をユーザの事情に合わせて活用するシステムだから、アプリのバージョンアップに対応し続けなければならないし、組織変更などユーザ側の社内事情の変化もある。
 細かい状況変化との追いかけっこだから、息の長いプロジェクトになる。
 お客様から「上の人は変わっても構わないが、今の現場を回しているしっかり者の若手エンジニアは、どうか異動させないでほしい」と要望されることになったりもするのだ。

 そういう現場に丸3年。お客様の信頼を取り結んで3年経ったということだ。
「最初の1年半くらいは、先輩の指示どおりにコードを書くだけで、あっぷあっぷだったんですけど……ね」

*

チーム最年少ながら、上流工程を担う。
技術調査、試用と評価、そして企画

 もちろん、3年経つうちには、チームの中での役割は変化している。
「最近は、コードを書くことよりも、調査とか企画の業務を担当することが多くなってきて……」

 たとえば、メーカー各社からリリースされる新製品の情報収集。お客様から「○社から出た××製品を今のシステム環境下で動かせるか?」と問われて調査する。試用できる場合は、テスト環境をつくって評価する。そして、それら新製品・新技術を組み入れたシステム更新の計画を立案していく。
 いわゆる“上流工程”の業務であり、それに伴い、お客様との直接コミュニケーションに臨む機会が増えてきた。プロジェクトリーダやサブリーダと一緒に会議に出て、調査結果を技術的見地から解説したり、新たな計画案をプレゼンしたり。T.Y.は、チームの中では最年少。実務経験も乏しい。お客様もそれをよくご存じなのに、T.Y.のプレゼンにじっと耳を傾けてくれる。T.Y.の報告・提案によって大きな予算が動くこともある……と思えば身が震える。

「自分としては、もうしばらくはコーディングの腕を磨くことに集中していたかった……。でも、上流工程に携わることは、入社当初からの希望。その機会が予想以上に早く巡ってきたことには感謝しています」

*

お客様に育ててもらっているのは、
エンジニアとしての自分だった

 新入社員のころは、ただひたすらに「自分の技術力を高めたい」「うまくなりたい」と意気込んでいた。
 お客様にとっての最上級を提供する。よりよいものをつくる。
 それが研修期間中を通じて教え込まれたI&L QUALITYの本質であるし、I&Lソフトウェアでは、誰もがT.Y.と同じように考える。

 ただ……と、近頃のT.Y.は考えるようになった。
「私が“いいもの”をつくれているのだとしても、それはお客様のオーダーがあってのこと。お客様が求めてくださるから、アウトプットが進化する。お客様がいるから、つくれるようになった今の自分がある」
 高品質のシステムは、自分たちの努力の成果とばかりはいえない。
 使う人の顔が見える位置にいて、使う人の声を聞きながら、つくり上げていく。お客様と一緒にシステムを育てていく。

 そうやって、エンジニアとしての自分も、お客様に育ててもらってきた。
「緊張はしますけど、会議や打ち合わせに出席するのが嬉しい。お客様と直接お話ができますから」

いちばん嬉しい「またお願いしたい」を
これからも重ねていく

 このところ、お客様社内の、それまでお付き合いのなかった部署から声がかかることが増えてきた。こちらから積極的に売り込んでいるわけでもないのだが、おかげで仕事が途切れることがない。

「お客様は大きな会社だから、定期的に人事異動があります。それまで頻繁にやりとりしていた担当者の方が別の部署に異動されるのは、ちょっぴり淋しい。
 でも、その一方で、以前お世話になっていた方が、異動した先でIT関係のお悩みに直面して、うちのチームを指名してくださるケースが少なくないのです。評価してもらえてるんだなぁ……と実感する瞬間ですよね」

 これまでの3年間で、お客様に言われて嬉しかった言葉は?
「それはもう……『またお願いしたい』ですよ!!」
 3年間、ずっと同じチームにいて、何度もそう言われてきた。その嬉しい言葉をかけてもらうために、これからも努力を重ねていくつもりだ。
 そして、T.Y.がチームを離れることがあるとすれば──そのとき彼女は、ポジションを1つか2つ上げているはずだ。

*
T.Y.

2019年4月入社。芝浦工業大学大学院理工学研究科応用化学専攻修了。学部4年生から修士課程を修了するまでの3年間、研究室に泊まり込みも辞さない勢いで化学実験に没入し、有機化合物「光応答性ポリロタキサン」の合成に成功。達成感と同時に燃え尽き感も味わって、就活では新たな道を模索。「数字と記号の羅列で価値を生み出すプログラミングと、物質の組み合わせで新素材を生み出す化学は、どこか通じる」とI&Lソフトウェアに入社。「やるべきことを見つけると、とことんハマるタイプ。化学もそうだったし、今の仕事も。でも、それだけじゃイケナイと思って、最近“推し活”を始めました。某2.5次元俳優さんのミュージカルを見まくってます……あれっ、やっぱりハマってる」