以前とは別次元のスピード感
対応するために必要な「イノベーション」

 ソフトウェア受託開発とは、平たく言えば「お客様(ユーザー)に頼まれてソフトウェアをつくること」です。「頼まれたとおりにつくる」ということですから、裏を返せば「頼まれたことと違うこと」を途中で求められたら、工期も費用も別にかかるのが当然。

 この前提があるからこそ、発注する側は、仕様変更がなるべく発生しないように要件定義をしっかり詰め、仕事を受注するわれわれも、多少の仕様変更なら余裕を持って対応できるシステムづくりに注力してきたわけです。そして、将来の状況変化を見越した「保守性」の高いシステムづくりは、I&Lソフトウェアの技術力を示すものです。

 とはいえ、ここ数年、ソフトウェア開発を取り巻く状況は、厳しさを増しています。

 AI、クラウドコンピューティングといった“イノベーティブ”な技術の普及によって、私たちは、以前とは別次元のスピード感に翻弄されるようになりました。

 かつては1年がかりでやっていた案件が、今や半年程度。開発の途上で、それまで存在していなかった新技術が出てきて、それを取り入れる必要に迫られることもあります。

 精魂込めて作り上げたシステムが、お客様に納めたときには陳腐化している――エンジニアとしては忸怩たるものもありますが、これが、今、この業界で激しく進行しているイノベーションです。私たちはそれに対応しなければなりません。

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エンドユーザーの視点に立ち、
「要件定義」をゼロから任されるパートナー

 その一方で、私たちは「働き方改革」というイノベーションにも取り組まなければならないわけです。納期短縮と新技術への対応が、現場のエンジニアの負担増によって達成されるのだとしたら、それはイノベーションではありません。

 スピード化やグローバル化は、抗えない現実です。そうした中でI&Lソフトウェアが生き残り、さらなる成長を遂げていくためには、私たち自身がイノベーティブに、立ち位置を変えていく必要があります。

 I&Lソフトウェアは「エンドユーザー直接取引」にこだわってきました。そのこだわりをさらに進めて、これからは「エンドユーザーの“イコールパートナー”になる」ことをめざしていきます。

 イコールパートナーとは、文字通り、「お客様と同じ位置に立つ」ということです。

 「頼まれてつくる」のが受託開発ですから、「何をつくるか」を決めるのはお客様です。お客様が定義した要件に沿って、私たちは開発を進めていきます。「エンドユーザーとの直接取引」「一次請け」といっても、開発側はあくまで要件定義を待つ立場。それが当たり前でした。

 しかし、“待ちの姿勢”で臨んでいては、状況変化に振り回されるばかり。ユーザーニーズを先回りして掴み、要件定義をゼロから任される“パートナー”にならなければ、今のスピード感についていけません。

 一次請けの開発者として、エンドユーザーのすぐ側にいるからこそ、先回りができるはず。お客様がまだ自覚していない“潜在ニーズ”を先回りして把握できれば、お客様にイノベーティブと思ってもらえる提案ができるでしょう。

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必要なことは、
お客様とのコミュニケーションのさらなる深化

 「お客様と同じ位置に立つ」「ユーザーニーズを先回りして掴む」ということは、お客様の業務に精通していることが大前提となります。

 しかしながら、本来、エンジニアはある技術領域の専門家です。われわれの場合はソフトウェアが専門であり、お客様の業務である金融とか物流とかの業務知識の専門家ではありません。それを与えてくれるのは、主にお客様。私たちがお客様の業務知識を得る最善の方法は、お客様とのコミュニケーションに尽きます。

 私たちは、お客様とのコミュニケーションをより深めることで、お客様のビジネスを「一緒に考えることができる」イノベーション組織になろうとしています。

お客様満足度調査結果

お客様対応/コミュニケーション コミュニケーションを取りやすいですか?

プロジェクトリーダー全員で勉強している
「ドラッカー経営学」

 お客様にイノベーションを提供できるようになるためには、私たち自身が「イノベーションとは何か」を体系的に知らなければなりません。

 そこで、その手がかりとして、プロジェクトリーダー級の社員全員で、ピーター・ドラッカーの著作を学ぶ活動をしています。全員で同じ本の同じ節を熟読して議論。その成果をプロジェクトチームの現場の中で実践する。定期的なミーティングとして繰り返すことで、全社的なマインドセットを推し進めるわけです。

 体系的に説かれた書を基に整理してみると、われわれが追求している「イコールパートナーになる」ということ自体が、ことさらに特別なテーマでもない――とわかってきます。

 「お客様より先回りしてユーザーニーズを掴む」こととは、つまりは、現場で毎日お客様と接している一人一人が、しっかりとアンテナを張って、次の仕事のチャンスを見逃さないということです。

 イノベーションとは、自ら機会を求めるアクションの積み重ね。

 I&Lソフトウェアにとって、難しいことではありません。

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I.T.

1967年生まれ。立正大学文学部哲学科卒。
大手ソフトハウスに新卒入社。「年功序列の大手ではなく、実力主義の会社で自分の力を試してみたい」と、1992年に、創業3年目のI&Lに転職。
プロジェクトリーダー・マネージャーを経て、2006年より現職。